「疲れたから温泉でのんびり♡」と思っても、多忙に慣れている身にとっては案外手持無沙汰になってしまうこともある温泉滞在。結局いつも通りにスマホをいじって時間をつぶし、そこまで非日常な気分になれなかった。そんなことも多々あります。せっかく時間をとって旅に出るからには心も完全に日常を離れたいもの。そんな思いを叶えてくれる場所を見つけました。
新潟県の魚沼エリア、大湯温泉。お米が美味しいことでも知られる魚沼地方は東京駅からわずか1時間半で訪れることができます。山々に囲まれ棚田が広がるその風景の中を行き、岩魚が泳ぐ清流添いに立つのが友家ホテル。外観はいたって普通の、少し古びたホテルですが一歩中に入ると迎えてくれるのはお香の香りとジャズ、そしてまるでカフェのようなインテリア。
古いホテルの良さを残しながら現代的なインテリアと融合させているこのホテル、館内もお部屋も一般的な温泉旅館やホテルとはひと味違うセンスを感じることができます。
中でももっとも特徴的なのは館内のいたるところにあるライブラリースペース。「娯楽室」と名付けられたラウンジには壁一面に漫画(昭和生まれに懐かしいセレクト)、さまざまなジャンルの書籍、そして雑誌。中央に置かれているのは卓球台とビリヤード台、レトロなファミコンやインベーダーゲームが楽しめるスペースもあります。これらの本や漫画は自由にお部屋に持っていくことができるので、ゆっくり楽しめるのも嬉しいですね。
別のラウンジや、なんと貸し切り温泉の脱衣スペースにまで本が用意されており、本好きにはたまりません。自分で選んだ本を旅先に持っていくのも良いですが、旅先で出会うというのも楽しい体験です。なんとなく中目黒あたりにありそうな雰囲気のこの娯楽室、山に囲まれた小さな温泉街の中で予想外の異空間。
そしてもう一つの特徴が、温泉。このホテルには4つのお風呂があり、うち2つは貸し切り専用です。貸し切りというと有料で利用できる時間も決まっていることが多いのですが、ここは空いていればいつでも自由に使えるというスタイル。光の加減で色を変えていく川を眺めながらの木造りの露天風呂とレトロなタイル張りの内風呂、どちらもついつい長居してしまう心地よさで、一人でゆっくり入るにもぴったりです。
4か所それぞれ脱衣所のインテリアも異なっていて使うのが楽しくなるような可愛らしいつくり。シャンプーやコンディショナーまでお風呂ごとに違うものが用意されているというこだわりぶりです。無味無臭、透明でクセのないお湯ですが湯上り後もずっとあたたかさが続き、肌はつるつるサラサラに。熱すぎない温度は景色を眺めながら長湯でき、カラダの芯から温めてくれます。読書を楽しみ、ちょっと疲れたら温泉に浸かり、そしてまた部屋に戻って読書…という気ままでのんびりした滞在もよさそう。
もちろん魚沼エリアですからご飯の美味しさは言うまでもありません。山菜や魚を中心とした食事は重くなく、そして基本的に部屋食なので一人旅でも気兼ねなく自分のペースで楽しめます。
人里離れた温泉地という転地効果に加えて、本や漫画の世界にどっぷり没頭できるこのホテル。その不思議で居心地の良い世界観は訪れた人の心を癒してくれること間違いありません。